どうも、くりまろと申します!
本記事では、書籍『「スーパーマリオブラザーズ」の音楽革命 近藤浩治の音楽的冒険の技法と背景』のレビューを書いていきます。
誰もが聞いたことがある「スーパーマリオブラザーズ」の音楽。
本書は、その音楽の誕生背景や各楽曲の仕組みを深く掘り下げ、マリオ音楽が人々を魅了した要因を解説する内容になっています。
ゲーム音楽やマリオシリーズのファンはもちろん、ゲームの歴史に興味がある方におすすめの一冊です。
『「スーパーマリオブラザーズ」の音楽革命』の概要
初代「スーパーマリオブラザーズ」の音楽に焦点を当てた内容
本書は、1985年発売の「スーパーマリオブラザーズ」の音楽に焦点を当て、楽曲誕生の背景や、各楽曲の狙いを掘り下げる内容です。
マリオシリーズ全体に触れる部分もありますが、メインの話は初代「スーパーマリオブラザーズ」についてになります。
前半:マリオ音楽誕生の背景
前半では、「スーパーマリオブラザーズ」の音楽が、どのような歴史的・技術的背景のもとで制作されたのかが解説されています。
任天堂のゲーム制作に対する姿勢や、作曲者である近藤浩治氏の作曲哲学が、前半部分の中心テーマです。
さらに、ファミコンの限られた音源環境の中で、どのようにして記憶に残るメロディが作られたのか、技術的な解説も含めて記述されています。
後半:楽曲の音楽的分析
後半では、「スーパーマリオブラザーズ」の各楽曲が分析・解説されています。
音楽理論による分析や他ジャンルの音楽との比較を通じて、なぜマリオの音楽がプレイヤーの心に残るのかを解説しています。
また、音楽だけでなく、効果音に関する分析や考察も取り上げられています。
読んだ感想
本書は、ゲーム音楽だけでなくゲーム業界の歴史を知る上でも面白い一冊だと思いました。
近藤浩治氏がプレイヤーの体験を徹底的に考え抜き、誰もが知るようになる魅力的な楽曲を生み出したことが、「スーパーマリオブラザーズ」の成功に大きく貢献したことがよく伝わります。
本書を通じて、音楽がどれほど重要な役割を果たしたのかを改めて認識しました。
次の引用は、「地上BGM」の楽曲解説の一部分です。
メトロノームのように一定に刻まれるリズムと違い、近藤の「地上BGM」は私たちに「動きたい」と強く思わせるような音楽だ。(中略)この音楽では長調やダンスのような曲調によって新しい冒険の楽しさと興奮が表現される一方で、不揃いのリズムが底なしの穴を足場から足場へと飛び越えていくときの不安を反映し、絶えず緊張感がもたらされている。(中略)こうした聞き手と音楽の身体的な結びつきは「ブレイヤーの体験に合った音楽を作る」という近藤の作曲哲学による産物だ。
アンドリュー・シャルトマン, 「スーパーマリオブラザーズ」の音楽革命 近藤浩治の音楽的冒険の技法と背景, DU BOOKS, 2023, p.69
この部分は、楽曲に施された工夫を簡潔に表現しています。
マリオの楽曲が、プレイヤーの行動や感情にマッチするように計算されて作られたものであると分かります。
ゲーム音楽が単なる付随の背景音ではなく、ゲーム全体の没入感を高めるために不可欠な要素であることを改めて感じました。
今後、ゲーム音楽を聴く際には、その背後にある作曲者の意図や、どのようにプレイ体験を向上させているのかを考えながら聴くと、さらに深い楽しみ方ができると思いました。
本書の良い点
説得力のある楽曲分析
楽曲の特徴が音楽理論を交えて丁寧に分析・解説されており、その説明には非常に説得力があります。
著者のアンドリュー・シャルトマン氏は、ニューイングランド音楽院で音楽理論学科の教授を務めており、クラシック音楽を専門としています。(シャルトマン氏のホームページ)
その専門知識に裏打ちされた解説は信頼性が高いです。
本書の翻訳元である『Koji Kondo’s Super Mario Bros. Soundtrack』(2015)は、アメリカの大手雑誌「ザ・ニューヨーカー」から「圧倒的な正確さ」と評されるなど、高い評価を受けています。
僕みたいな音楽素人からすると、楽曲分析についてはただ「なるほど」と頷くだけなので、信頼できる人物の解説はとてもありがたいです。
分かりやすい説明
難しそうな話が分かりやすく噛み砕いて説明されているのも本書の良い点です。
後半での楽曲分析を理解するために、ファミコンの音源についての技術的な説明が出てきます。
通常、こういった技術的な内容は難しくなりがちですが、本書では簡潔にまとめられているので、音楽や技術に詳しくない僕でもすんなり理解できました。
もちろん、簡略化された説明なので、本格的な理解には至りませんが、本書を読む分には十分な内容です。
このように、予備知識がない読者でも理解できるよう、必要最低限の情報を載せているのが本書の特徴だと感じました。
本書の悪い点
悪い点と言っても、そこまで目立った欠点は無いと感じました。
ただ、少し気になった点を挙げるとすれば、以下の2点です。
楽曲解説部分は音楽用語が使われる
先述したように、本書は全体的に分かりやすく丁寧に説明されています。
ですが、後半の楽曲解説部分では、その性質上どうしても音楽用語が登場します。
音楽経験がない人にとっては少し難しく感じるかもしれません。
とはいえ、著者はできる限り簡潔に説明しており、用語の意味も解説されているので、全く理解できないことはないと思います。
序盤は音楽に直接関係のない話
イントロダクションが終わると、本編の最初の20ページほどは、音楽には直接関係のないゲームの歴史について語られています。
この部分は、本書のテーマである音楽と関係ないと感じるかもしれません。
ただし、この歴史的背景はマリオの楽曲誕生に深く関わってくるため、内容自体には十分に意義があります。
【まとめ】ゲーム音楽の重要性を再認識できる一冊
本書『「スーパーマリオブラザーズ」の音楽革命』は、初代「スーパーマリオブラザーズ」の音楽に焦点を当て、その誕生の背景や各楽曲の魅力を解説しています。
マリオの音楽がいかにゲーム体験を豊かにしているかを改めて認識できる一冊です。
音楽用語が一部出てきますが、分かりやすい説明がされているため、音楽に詳しくない方でも十分楽しめる内容です。
ゲーム音楽やマリオシリーズのファン、またゲームの歴史に興味がある方におすすめの本です。
興味を持たれた方は、ぜひ読んでみてください。
以上、最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
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